JASPER〜蒼き森の鼓動〜


長森 「北乃国の恵浪が俺に会いたいだと?」
昌親 「はい。時と場所の指定は長森様にお任せするとの事。恵浪殿は滞りなく和議が成立したあかつきには一人娘を嫁に差し上げたいと申されております。」
鷹満 「なっ!…長森様、これは慎重にお返事なさった方が宜しいかと存じます。」
長森 「罠だと申すか?鷹満。……玄祥に会うて来る。」


その場には朔耶と巴と灯が残った。

朔耶
「……長森は嫁をもらうのか?」

「長森様はこの南埜国の国主で御座います。後継ぎを作る事も大切なお仕事と存じます。朔耶様もいずれ国の為にお嫁に行かれるのですから。」
朔耶はその場を後にする。

「朔耶様…。灯、この様な時に限って珍しく意見するのですね。」
「大意は御座いませぬ。」
「そうでしょうか?」

巴は朔耶の後を追う。

「侮れない人。」

申之助「灯殿!」

一真「北乃国の恵浪の話、聞いたか?」

「はい、その事で長森様が玄祥様の所へ。」

申之助「急ごう一真。」




龍深家から街へ行く途中(須々と朔耶の待ち合わせの場所)に、朔耶は一人佇む。
碧玉
(へきぎょく)を握り締めると、石が光る。

「南埜国の未来の為、北乃と和議は最良の方法…。」

巴はその場を目撃してしまう。

朔耶「見られちゃったね…。隠しておく事、長森との約束だったんだ。」

「今のは…?」


朔耶 「石の力。何で光るのかは判らないけど満月が近くなると自分の意志でこういう事出来る様になるんだ。長森がね、朔は月の引力に好かれてるんだって…。こういうのは特殊な力で人に見られたら長森の側にいられなくなるって玄祥が言うから今まで頑張って約束守ろうとしてた…。でも…。」

朔耶 「もう今までみたいに長森の側にいたらいけないんでしょ?」

「何をそんなお顔をする事がありますか。こんなに仲むつまじいご兄妹を私は知りません。あのお方が本当にお心を許しているのは朔耶様だけです。誰も代わりにはなりえません。」

朔耶「朔が恐くないの?」
「恐い?とんでも御座いませぬ。」

朔耶「……巴がお嫁さんならいいのに。」


玄祥 「本日、西之国から若君の嫁として朔耶様を貰い受けたいとお話がありました。北乃との和議を成立させるか、西之の申し出を受け入れるか、どちらをお選びになられますか。よもや二カ国とも一度に敵にまわすおつもりではありますまいな。」

長森「ふざけるな!」

玄祥「お斬りなさいますか?どうぞお好きになさいませ。とうに長森様に捧げた命で御座います。」
玄祥 「あの石のせいかも知れませんが朔耶様の成長の速さは尋常ではありません。常人の倍とまでは申しませんが、それに近い速度に感じます。ここへお呼びになった時、周りの世話付きを総入れ替えしてごまかしたおつもりでも、いずれまたそんな時がやって参ります。ましてや子供の頃からお側で仕えている一真が気がいておらぬとは到底思えませぬ。」

長森「何が言いたい…?朔は国の宝だ、手放しはせぬ!」

玄祥「元より承知しております!朔耶様の物見の様なお力で国の危機が何度救われた事か…!貴方様が朔耶様を連れて来られた時、私はいつもの気まぐれだと思いました。しかし違っていました。守るものが出来、貴方様は変わられた。」
長森「……北乃へ出向く。こう申せば良いのであろう!だが!北乃の娘を嫁にすると決めたわけではないぞ!」



北乃の恵浪の声が響く。
「ほう…長森自らこの北乃へ来ると言うのか…。
ふっ…面白い男だ。益々会ってみとうなったぞ。」


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